“女の嫉妬”に“EXO”“北朝鮮”どれも気になる「今月の韓国映画」
この冬、日本で公開される韓国映画は“新春”にふさわしく、様々なジャンルから厳選されたラインナップ。
EXOシウミンのスクリーンデビュー作も公開前から話題になっている。
『キム・ソンダル 大河を売った詐欺師たち』
©2016 CJ E&M Corporation, All Rights Reserved
映画あらすじ
1600年代、清が「丙子胡乱(へいしこらん)」の戦いで朝鮮を制圧。死体が山積みとなった戦場では“死んだフリ”をして生き残った三人の男がいた。
甘いマスクの色男キム・ソンダル(ユ・スンホ)と、メタボ気味の中年男ポウォン(コ・チャンソク)、そして美少年のキョン(シウミン【EXO】)。
数年後、彼らは伝説の詐欺軍団を結成。筆頭のソンダルは何にでも変装する天才的な詐欺師ぶりを発揮していた。
ところがある日、キョンを中心にした計画を実行するが、裏切り者のせいで失敗してしまう。
ソンダルの前に立ちふさがったのは、絶対権力者のソン・デリョン(チョ・ジェヒョン)だった。そこでソンダルはとんでもない作戦を思いつく。
公式サイト http://kimseondal.jp/
騙されても許せるイケメンぶり
新春にふわさしく、爽快な1本。EXOのシウミンは劇中で、チョ・ジェヒョンから「いい目をしている」といわれているが、映画デビュー作とは思えないほど伸び伸びしている。
それにしても、初主演映画『おばあちゃんの家』(2002年)から15年。祖母を困らせていた7歳児のユ・スンホがこんなイケメンになろうとは。
『キム・ソンダル 大河を売った詐欺師たち』
(原題:『詐欺師 キム・ソンダル』2016年/韓国/121分)
2017年1月20日(金)よりTOHOシネマズ新宿ほか全国順次公開
気づいた頃には、観客のハートも盗まれていたりして?
『愛を歌う花』
©2016 LOTTE ENTERTAINMENT All Rights Reserved.
映画あらすじ
1943年、京城唯一の妓生養成学校。ずば抜けた美貌と優れた歌唱力で最高の歌姫と称されるソユル(ハン・ヒョジュ)と、天性の歌声を持つヨニ(チョン・ウヒ)は幼なじみで、かけがえのない親友だった。
ソユルは、最高峰の作曲家ユヌ(ユ・ヨンソク)と結婚を誓い、彼が作った「朝鮮の心」を歌いたいと願う。だがユヌはいつしか、心に響くヨニの歌声に魅了されるのだった。
歌手になることを夢見るソユルは次第にヨニへの嫉妬心が芽生え始め、3人それぞれの運命が狂い始めていく―。
原題の『解語花(ヘオファ)』とは、“理解する花”という意味。妓生をたとえに使われる言葉で、本作では最後の解語花たちが歩んだ悲劇的な運命が描かれている。
公式サイト http://aiuta-movie.com/
いつの時代も、女は嫉妬する生き物
人気女優ハン・ヒョジュが嫉妬に狂う妓生役を熱演。女優魂で見事な正歌も披露している。
セリフに登場する“券番”とは妓生を養成する妓生学校の総称で、今でいう芸能事務所のようなもの。当時は妓生出身の歌手が次々にデビューしていたという。まさに激動の時代で、水面下では熾烈な争いが繰り広げられていたに違いない。
『愛を歌う花』
(原題:『解語花』2016年/韓国/120分)
1月7日(土)よりシネマート新宿ほか全国順次公開
男の心変わりは昔も今も変わらない?
『The NET 網に囚われた男』
©2016 KIM Ki-duk Film. All Rights Reserved.
映画あらすじ
北朝鮮の寒村で、貧しくも妻子と共に穏やかな日々を送るチョル(リュ・スンボム)。その朝も唯一の財産であるモーターボートで漁に出るが、魚網がエンジンに絡まってボートが故障。自分の意に反して韓国側へと流されてしまう。
韓国の警察に拘束されたチョルは、スパイ容疑で取調官(キム・ヨンミン)から執拗で残忍な尋問を受けることに。一方で警護官のジヌ(イ・ウォングン)は、家族の元に帰りたいと願うチョルの潔白を信じるのだった。
華やかな資本主義の誘惑を退けながらも、やがて韓国社会の経済的繁栄に隠されたダークサイドに気づくチョル。その後、念願叶って北朝鮮に送還されるが、彼を待ち受けていたのはいっそう過酷な運命だった。
公式サイト http://www.thenet-ami.com/
南北で受けた待遇は、まさかの“往復ビンタ”
鬼才キム・ギドク監督が送り出す社会派ヒューマンドラマ。南北に分断された朝鮮半島の悲劇だけでなく、両国の矛盾と深い闇を鋭く描いている。ハッキリ言って、作品に華やかさはなく、今の韓国社会と北朝鮮を取り巻く問題を直視することに。
唯一、観客がホッとできるのはジヌ役の俳優イ・ウォングンの存在だけといえる。
『The NET 網に囚われた男』
(原題:『網』2016年/韓国/112分)
1月7日(土)よりシネマカリテほか全国順次公開
進むも地獄、退くも地獄。にっちもさっちもいかないとは、このこと。
『太陽の下で-真実の北朝鮮-』
© VERTOV SIA,VERTOV REAL CINEMA OOO,HYPERMARKET FILM s.r.o.ČESKÁ TELEVIZE,SAXONIA ENTERTAINMENT GMBH,MITTELDEUTSCHER RUNDFUNK 2015
映画あらすじ
8歳のジンミは模範労働者の両親と共に平壌で暮らしている。ジンミは金日成の生誕記念「太陽節」で披露する舞踏の練習に余念がない。
そんなエリートの娘を持った両親は、職場の仲間から祝福を受け、そこには“理想の家族”の姿が映し出されていた。
ところが、北朝鮮の日常を撮影したドキュメンタリー映画とは名ばかりで、それはすべて北朝鮮政府が演出して作り出したもの。高級な住まい、親の職業、クラスメイトの会話―。すべて北朝鮮がイメージアップのために仕組んだシナリオだったのだ。
疑問を感じたロシアの監督とスタッフは、撮影の目的を“真実を映す”ことに切り替える。その日から録画スイッチを入れたまま隠し撮りを敢行するが―。
公式サイト http://taiyouno-shitade.com/
北朝鮮側が見せる稚拙な演出がひどすぎて―
“理想の家族”なので、ジンミの母親はシャレた格好をしているが、どう見ても街の風景から浮いている。用意された食事も撮影が終わればさっさと片付けられ、これには笑うしかない。
そんなものを撮影するのは監督のプライドが許さなかったのだろう。
途中から敢行した隠し撮りだが、そこでジンミが見せた表情に胸が痛む。
『太陽の下で-真実の北朝鮮-』
(原題:『V paprscích slunce』2015年/チェコ、ロシア、ドイツ、ラトビア、北朝鮮合作/110分)
1月21日(土)、シネマート新宿ほか全国ロードショー
↑この姿は北朝鮮当局に「演出」された姿。本当の北朝鮮はこんなもんじゃない。
text:児玉愛子