国の登録有形文化財に指定された貴重な歴史的景観
◆地域の概要
豊稔池は、貯水量159万立法メートルを擁し、柞田川(くにたがわ)西岸の農地530haをかんがいする農業用ため池です。
豊稔池の堰堤(えんてい)は、全国で唯一のマルチプルアーチダムとして築造されています。築造開始は大正15年で昭和5年に竣工しており、わが国ダム築造技術が草創期にあった時代に、当時の常識を打ち破って、画期的なダム形式を大胆に採用しているばかりでなく、洪水吐(こうずいばけ)をサイフォン式にするなど随所に斬新な設計を取り入れており、学術的に評価の高いダムであるといえます。
事業の実施は農林省所管のもと県の直営にて行われ、工事は地元の受益農家を主体に構成された施工の各作業組と技術陣との統制のとれたチームワークにより、短期間で完成しています。
柞田川上流の大野原田野々(たのの)の山あいに、まるで中世ヨーロッパの古城の如くそびえる豊稔池の堰堤は、国の登録有形文化財に指定された貴重な歴史的景観となっています。
◆地域の保全のための取り組み
豊稔池の堰堤は、築造から半世紀余りの年月を経て、堤体の一部に漏水が生じるなど老朽化がみられることから、調査の結果、県営防災事業(防災ため池)によって改修することとし、昭和63年度に農林水産省の承認を受け事業に着手しました。改修工事の設計施工に際しては、堰堤築造当時の外観を損なうことのないよう配慮し、20億円余りの事業費を費やし、平成6年3月に竣工しています。
豊稔池石積式アーチダムの楽しみ方
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